あ、それ仏教用語です ~くらしのなかのほとけさまのことば~
なにげない言葉のなかに『仏教用語』が隠れています。知らず知らずのうちに私たちのなかに根付いている仏教を探してみませんか。住職のつぶやき作文のなかに5つの仏教用語がかくされています。どうぞみなさまも楽しみながらお読みくださいませ。
住職のつぶやき作文(仏教用語5つあります)
3歳の娘とあてもなくうろうろと
あたりを散歩するのは楽しい
まず玄関を出て
右にいくか左にいくかを聞いてみる
路面にある色違いのタイルを
飛び跳ねながら踏み分ける
落ち葉や木の枝、石ころをひろい
名前も知らない草花を見ては喜び
手で触り よく観察し
匂いをかぎすぎて くしゃみしては笑う
私から見れば何もなくても
彼女の眼には違ってみえる
ごきげんにただ歩いている姿は
それだけで輝いていました
かくれていた仏教用語の解説
その1「うろうろ」
あちこちへ動き回るさまを言いますが、「うろうろ」は漢字で「有漏」と書きます。漏れるものが有るという意味で、煩悩のことだそうです。「うろうろする」とは本能や欲求に翻弄されている様子ともいえましょう。ちなみに、煩悩がないことを「無漏(むろ)」と言います。
その2「玄関(げんかん)」
「玄」とは、「玄妙(げんみょう)=さとり」を表します。「玄関」とは、「玄妙な道に入る関門」、つまり奥深いおしえに入る手始め、いとぐちを表す言葉でありました。
その3「観察(かんざつ)」
仏教では「かんざつ」と読み、智慧によって正しく物事を見極めることをいいます。お釈迦様は自分を含めた世界を観察思惟し、そのあるべき姿を説かれたといわれます。観察は智慧によって行うものですから、物事を見るときには私情や主観をまじえないで、あるがままに観察したいものですね。
その4「くしゃみ」
ある時、お釈迦様がくしゃみをしました。すると弟子たちが一斉に「クサンメ」と唱えて、師の健康を願ったということです。「クサンメ」は古代インド語で「長寿」を意味します。インドでは、くしゃみをすると命が縮まるとされ、「クサンメ」と唱える風習があったといいますから、この言葉の起源には長寿を願うあたたかな背景がありました。
その5「機嫌(きげん)」
気分や心持ちを表す言葉ですが元々は、機を譏と書き、「譏嫌」という仏教用語です。譏は「そしる」、嫌は「きらう」で、「そしりきらうこと」を意味しました。仏教の戒律のひとつ、「息世譏嫌戒(そくせきげんかい)」から出た言葉です。「他の人が嫌がることはしない」という戒めです。人に向けた言葉ではなく、自らのありようを問う言葉でありました。
さて、みなさまはいくつおわかりになりましたでしょうか。
少しでも楽しみながらご自身のなかで醸造されていた仏教精神にふれていただけたなら幸いです。
南無阿弥陀仏