グリーフとの出会い
私が「グリーフ※」という言葉と出会ったのは7年前にさかのぼります。
(※グリーフは大切な人、ものなどを失うことによって生じる、その人なりの自然な反応、状態、プロセスのこと。)
2010年に第3世住職である父の往生により喪失を抱えた中、一心不乱に走り続けていました。今思うと走り続けないと立っていられなかったのかもしれません。父は病を得てから2か月で駆け抜けるように往生しました。これを受けてその春に学生を終えたばかりの私が住職となりました。急に大海に放り出されたような思いではありましたが繋がれたバトンを必死に握り、背中を押されるままに足を動かし続けました。そんななかで、東日本大震災、再開発による寺院移転、落慶法要など、経験したことがない世界をただひたすらに駆け回り続けました。
3年程してようやく周りを見る余裕が出てきたので、ゆっくり自らを省みたり、色々な研修会に出たり、本を読み漁ったりしました。そんな時、尾角光美(おかくてるみ)さんが書かれた「なくしたものとつながる生き方」という本に出会いました。当時、私が抱えていた喪失の状態を言い当てられているかのような思いがしました。著者自身の喪失体験や、著者が出会った喪失を抱えている人たちの言葉がとても丁寧に伝えられてあるのですが、本を読むことで自らの状態をそっと教えてくれる不思議な本でありました。
それからほどなくして、尾角さんが開催する「いのちの学校」が東京で開催されましたので参加しましたところ、喪失から生じる様々な状態や過程があることを学びました。今の自分の状態が過活動だったのかもしれないな、と客観的に見る機会をいただきました。また、先立ち往生した父との思い出を振り返るなかで、その関係性があらためて彩りを持ち、今この私にはたらいてくれているその温かさに深くうなずかせていただきました。南無阿弥陀仏。
その後、「いのちの学校」ファシリテ―ター養成講座第一期を修了しました。お寺という、いわば「いのちの学校」において、お念仏のみ教えを基軸に据えて、グリーフの抱え方、付き合い方をお伝えしていくお役目をまっとうできるよう勤しんで参りたいと思います。
グリーフケア等々についてご興味のある方はどうぞお声がけくださいませ。